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形式ばった証明

以下、小さい字で妖精国での対応物を書く。

定義 2.1   $ \prec$ が集合 $ S$ 上の前順序であるとは、次の二条件が 成り立つときに言う。
  1. % latex2html id marker 1195
$ \forall x \in S \quad (x \prec x)$
  2. % latex2html id marker 1197
$ \forall x ,y ,z \in S
\quad (x \prec y$    and $ y\prec z \implies x \prec z )
$

$ A$ には、次のような前順序関係が入る。

% latex2html id marker 1202
$\displaystyle x \prec y \quad {\Leftrightarrow}\quad
(\exists n \in \mathbb{N}\quad g^n(x)=y)
$

$ x \prec y$ とは、 $ y$$ x$ の子孫であるということである

$ A$ に同値関係 $ \sim$ が、

% latex2html id marker 1214
$\displaystyle x\sim y \quad {\Leftrightarrow}\quad ( x \prec y$    or $\displaystyle y \prec x)
$

で定義される。

$ x\sim y$ とは、 $ y$$ x$ の親戚であるということである

同値関係により、$ A$ がクラス分けされる。 各クラスは「親族」である

クラス $ A_{\lambda}$ ごとに $ A$ から $ B$ への写像 $ f$ とその逆写像 $ G$ を組み立てよう。 2つのケースに分かれる。

Case I: $ A_\lambda$ に最小元がない場合。

このばあい、 $ A_\lambda =g(A_\lambda)\subset B$ である。

% latex2html id marker 1239
$\displaystyle f\vert _{A_\lambda}={\operatorname{id}}, \quad
G\vert _{A_\lambda}={\operatorname{id}}.
$

と取れば良い。

Case II. $ A_\lambda$ に最小元がある場合。

その最小元を $ x_\lambda$ とおこう。

% latex2html id marker 1245
$ g^n(x_\lambda) \quad (n=0,1,2,\dots)$ は互いに相異なる。

すなわち、 $ (A_\lambda, g) \cong (\mathbb{N},+1)$ なのである。

$ B\supset g(A)$ だったから、 $ g^n (x_\lambda)\in B$ $ (n=1,2,3,\dots)$ .

$ x_\lambda\in B$ か否かによってふたとおりに場合分けされる。

Case II-1). $ x_\lambda\in B$ のとき。

$ B \supset A_\lambda$ である。

従って、Case I と同じく

% latex2html id marker 1261
$\displaystyle f\vert _{A_\lambda}={\operatorname{id}}, \quad
G\vert _{A_\lambda}={\operatorname{id}}.
$

と取れば良い。

Case II-2). $ x_\lambda \notin B$ のとき。

このときのみ、$ A_\lambda$ $ A_\lambda \cap B$ の間に違いが生じる。 $ A_\lambda$ $ A_\lambda \cap B$ との全単射を与えるには、一つずらせば良い。

$\displaystyle g: A_\lambda \mapsto (A_\lambda \cap B)
$

は全単射であって、その逆写像を $ h_\lambda$ と書けば、

% latex2html id marker 1277
$\displaystyle f\vert _{A_\lambda} =g,\qquad
G\vert _{A_\lambda}= h_\lambda.
$

と取れば良い。

上の証明は クラス分けの際に 選択公理を使っている。 実際には、選択公理を使わなくても済むので、 これは少し「弱み」と言えるかもしれない。

選択公理を使わずに証明するには、次のように考える。

$ X=A\setminus B$ とおく。

$ X$ は へそのない最長老たちの全体の集合にあたる。

さらに、

$\displaystyle W=A \setminus (\bigcup_{j=0}^\infty g^j X )
$

とおこう。 [ $ \bigcup_{j=0}^\infty g^j X $ は自分たちの親戚にへそのない最長老がいる人の 全体の集合にあたる。i 上の $ W$ はその補集合で, 親戚が皆へそを持つような人の全体の集合である。 ]

さて、

$\displaystyle g:
\bigcup_{j=0}^\infty g^j X
\to
\bigcup_{j=1}^\infty g^j X
$

は全単射である。

次のことは容易に分かる。

$\displaystyle A= \bigcup_{j=0}^\infty g^j X \cup W
$

$\displaystyle B= \bigcup_{j=1}^\infty g^j X \cup W
$

よって、$ A$$ B$ の間の全単射が存在する。

このラインが、 本講義の教科書(小林、逸見著、「集合と位相空間の基礎、基本」)にある証明 である。記号もなるべくあわせてある。詳細は教科書を参照のこと。


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2015-06-10