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代数学特論II 要約 No.3
今日のテーマ:
前回の流れから行くと、行列 をまず弱固有空間ごとに分けて考えて、
それぞれの部分で の標準型を考えるのが自然であるのだが、
若干見方をかえて加群の理論から話を進めよう。
次正方行列
が与えられているとする。 は
に作用する。但し、ここに、 は基本ベクトルである。 には、多項式環
が、
一般に
(右辺は行列とベクトルのかけ算)として作用している。ドット (.) に注意。
作用を考えるときにはいつでもこのドットをつける。
さて、 の成分を多項式に拡張して、
というのを考えよう。 の元
というのは
形式的に
と書くこともできる。こっちのほうはドットがつかないことに注意。
ドットや、行列の積との区別を強調するために、こちらのほうのことを
と書くこともある。( はテンソル記号と呼ばれる。)
テンソル記号をドットに置き換える操作を と書こう。
すなわち、
を
で定義する。
は線型写像で、全射であることはすぐに分かる。
の核は、次のような線型写像の像と一致する。
を と の基底を取り換えることによって、できるだけ
やさしい表示にすること、これがポイントである。
実は、 のような特殊な元に限らず、そのようなやさしい表示がある。
すなわち、
ではユークリッド除法(余りを許した割り算)ができることから、
「掃き出し法」が使えて、次のような命題が成り立つ。
命題 3.1
の元
に対して、
の元を成分にもつ行列
で、
を満たし、
(ただし
)
という形にできるものが存在する。
上の
は の単因子と呼ばれる。
上の はそれぞれ
次のような「基本変形」を具体的に表現するような行列の積である。
- ...(行変形) のある行の多項式倍を の別の行に加える。
- ...(列変形) のある列の多項式倍を の別の列に加える。
この続きは次回にまわす。
問題 3.1
の元を成分にもつ
次の正方行列
に対して、命題
3.1を満たす
および
を具体的に求めなさい。
平成15年10月21日