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: 可換スキームの非可換スキームとしての無限小変形 : 曲面の非可換変形のいくつかの例について : 非可換スキームの定義   目次

非可換スキームをつくろう。

スキームの定義は前節に述べたようなものがあるので、次の目標は 非特異多様体に当たる「良い」スキームを定義することである。

どのような意味で「良い」かはいろいろ考えられようが、いくつか羅列してみると、

  1. (コ)ホモロジー論的な定義を考える。 スムース性の最終的な定義は ホモロジー代数の言葉で述べられるのが妥当であると思われる。 既にいくつか定義が提出されているようであるが、いまのところ 私は余り詳しくないのでここで述べることは控えさせて頂く。

  2. 非特異性の本質はその等質性にある、と見ることもできる。 例えば、$ C^\infty$ 多様体はその自己微分同相群上の等質空間であり、 スムースな可換スキームには自己同型は少ないがその無限小版である ベクトル場が局所的には十分多くある。

  3. 良いものの小さい変形はよいはずである。と言う仮設をたてることもできる。 たとえば、通常の意味のスムースなスキームは良いものであろうから、 その小さい変形を考えれば良いスキームの例を作れるのではないか。 (ただし話を「プロパーな」スキームに限るべきである。プロパーでない多様体の 変形はいきなり悪くなる可能性がある。)
  4. generic なものは良いものである。すなわち、非可換スキームの族において、 大多数を占めるものの特徴が良いものを表現している。

次節以降では、3.の考えに従って、「良い」非可換スキームの例を得ることを 試みよう。



平成15年9月1日