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: 参考文献 : 曲面の非可換変形のいくつかの例について : マーニンの量子化されたテータ関数 [5]との関係   目次


幾何学的ブラウアー群の方向への変形

さて、

$\displaystyle H^2(X,{\mathcal O}_X)
$

の方向の変形については、 幾何学的ブラウアー群のコホモロジー群による表示

$\displaystyle \operatorname{Br}(X)=H^2_{\operatorname{\acute et}}(X,{\mathcal O}_X^{\times})_{\operatorname{torsion}}
$

を想起させる。 (聞く所によると普通右辺のエタール コホモロジー群にはもともと位数有限の元しか 無いらしいが解析幾何の場合も睨んでこう書くのを許して頂きたい。)

この表示の作り方を思い出してみると、右辺の元に対して $ X$ の 被覆 $ \{U_i\}$ をとり、 $ M_n({\mathcal O}_{U_i})$ を うまく つなぎ直すことにより、$ X$ 上の代数の層 $ {\mathcal A}$ (東屋代数)を構成するというものであった。 先に述べたように $ {\mathcal O}_X$ $ M_n({\mathcal O}_X)$ とは森田同値であるから、 $ {\mathcal A}$ 加群のカテゴリーを構成するのは単に $ {\mathcal O}_{U_i}$ 加群の カテゴリーをつなぎ直すことにほかならない。 すなわち、上の表示の解釈においては、 カテゴリー論的に考える方がかえって自然であることが 納得頂けるだろう。

前節でも見られたことだが、非可換スキームの族を考えようとすると ある連続的な対象の有理点ないしトージョン点に対応する部分 のみが捉えられることがあるようだ。 「解析幾何学」の様な対象にまで話を広げて、 とびとびにしか出て来ていない 「東屋代数 $ {\mathcal A}$ の上の module の圏」を補間するような圏が 「解析幾何学」の様な対象にまで話を広げて出て来ると面白い。

また、前節で見た二次元トーラスの変形はこの節で述べた構成と 深く関連している。この奇妙な合致が何を意味しているかは、 興味深い研究材料になると思われる。



平成15年9月1日