理工系線形代数学 No.13要約

今日のテーマ: 固有値と固有ベクトル。

定義 13.1   $n$次正方行列 $A$ が与えられたとする。$\bf0$ と異なる元 $\mathbbm v\in$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$$^n$ が、 定数 $c$ に対して、

$\displaystyle A \mathbbm v = c \mathbbm v
$

を満たすとき、 $\mathbbm v$ のことを $A$ の固有値 $c$ に属する固有ベクトル (略して $c$-固有ベクトル)という。

13.1   $\begin{bmatrix}
6 &7 \\
8 & 5
\end{bmatrix}\begin{bmatrix}
7 \\ -8
\end{bmatrix}=
-2\begin{bmatrix}
7 \\ -8
\end{bmatrix}.
$ ゆえに $\begin{bmatrix}
7 \\ -8
\end{bmatrix} $ $\begin{bmatrix}
6 &7 \\
8 & 5
\end{bmatrix}$$(-2)$-固有ベクトルである。

命題 13.2   $n$ 次正方行列 $A$ が与えられたとき、 $\lambda \in$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$$A$ の固有値になるのは、 $\lambda$

$\displaystyle \operatorname{det}( A -x \cdot 1_n)=0
\tag{固有}
$

の解であるときである。(固有)式の左辺を $A$ の固有多項式、 方程式(固有)を $A$ の固有方程式と呼ぶ。

命題 13.3   $n$ 次正方行列 $A$ が与えられて、 $\lambda \in$   $\mbox{${\mathbb{R}}$}$$A$ の固有値であるとする。 このとき、$A$$\lambda$-固有ベクトルの全体に $\bf0$ を 付け加えた集合

$\displaystyle V=\{ \mathbbm v \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ^n ; A \mathbbm v = \lambda \mathbbm v\}
$

$\mbox{${\mathbb{R}}$}$ 上のベクトル空間である。$V$ のことを $A$$\lambda$-固有空間 と呼ぶ。

(*) 実数だけを相手にすると、固有方程式が解けるか否かは一般にはわからない。 そこで、考える係数を複素数の範囲まで広げて、 複素行列の複素数の範囲での固有ベクトル、固有値を考えるほうがわかりやすい。 ただし、その場合は線形変換の幾何学的な意味づけについて再考する必要がある。