微分積分学基礎 No.9要約

今日のテーマ:三角関数、指数関数

単位円周上の点 $ P(x,y)$ に対して、$ OP$ と、$ x$ 軸上の正の部分とのなす角を $ \theta$ と書くことにする。(単位は弧度を用いる。) $ x,y$$ \theta$ の関数と見ることができるので、

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$\displaystyle x=\cos(\theta), \quad y=\sin(\theta)
$

と書いて、$ \cos,\sin$ を定義する。

図形的性質(原点のまわりに $ \alpha$ ラジアン回転して $ \beta$ ラジアン回転したものは 結局 $ \alpha+\beta$ ラジアン回転したものである) により、三角関数の加法定理が従う。

$\displaystyle \sin(x+y)=\sin(x)\cos(y)+\cos(x)\sin(y)
$

$\displaystyle \cos(x+y)=\cos(x)\cos(y)-\sin(x)\sin(y)
$

複素数平面を用いると:

  1. $ z$$ i$$ iz$ $ \leftrightarrow$ $ z$ を原点のまわりに $ \frac{\pi}{2}$ 回転したもの
  2. $ \cos(\alpha)+i \sin(\alpha)$ $ \leftrightarrow$ $ 1$ を原点のまわりに $ \alpha$ 回転したもの
  3. $ i(\cos(\alpha)+i \sin(\alpha))$ $ \leftrightarrow$ $ i$ を原点のまわりに $ \alpha$ 回転したもの ($ \because$ (1))
  4. $ (\cos(\alpha)+i \sin(\alpha))z$ $ \leftrightarrow$ $ z$ を原点のまわりに $ \alpha$ 回転したもの ($ \because$ (2,3))
つまり、「原点のまわりに $ \alpha$ 回転する」という動作が $ (\cos(\alpha)+i \sin(\alpha))$ を掛ける」という操作で説明されるのである。

$ b>1$ に対して、 $ b,b^2,b^3,\dots$$ b$ を繰り返し掛けることで 定義される。 $ b^0=1, b^{-1}=\frac{1}{b}, b^{-2}=\frac {1}{b^2}$. 整数 $ m$ と正の整数 $ n$ に対して、

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$\displaystyle b^{\frac{m}{n}}=(\sqrt[n]{b})^m
$

と定義し、一般の実数 $ r$ に対して、$ b^r$$ r$ を有理数で近似した ものの極限として定義する。

$ x\mapsto b^x$0 での微分係数は

$\displaystyle \lim_{h\to 0}\frac{b^h-1}{h}
$

である。これが存在して、$ 1$ であるような $ b$ をとる。 そのようなものが

$\displaystyle e=\lim_{n\to \infty} \left( 1+\frac{1}{n}\right)^n
$

である。 定義により任意の実数 $ x,y$ に対して、

$\displaystyle e^{x+y}=e^x e^y
$

が成り立つ。(指数法則)

実数 $ x$ に対して、次のことが成り立つ:

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$\displaystyle e^x=\sum_{k=0}^\infty \frac{1}{k!} x^...
...(2k)!} x^{2k}
,\quad
\sin(x)=\sum_{k=0}^\infty \frac{(-1)^k}{(2k+1)!} x^{2k+1}
$

このことさえ知っていれば、最初から $ e^x,\cos,\sin$ をこの式で定義することも 可能である。さらに、 これを用いると、$ x$ が複素数の範囲であっても $ e^x,\cos(x),\sin(x)$ が定義され、

$\displaystyle e^{ix}=\cos(x)+i \sin(x)
$

が従う。