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理工系線形代数学 No.14要約

今日のテーマ: 行列の対角化。

命題 14.1   $ n$ 次正方行列 $ A$ の固有値 $ \lambda_1,\dots, \lambda_n$ の固有ベクトル $ P=\begin{bmatrix}
\mathbbm v_1 \dots \mathbbm v_n
\end{bmatrix}$ に対して、 $ AP=P\cdot {\operatorname{diagonal}}(\lambda_1,\dots, \lambda_n) $ が成り立つ。とくに $ \mathbbm v_1,\dots, \mathbbm v_n$ が、一次独立ならば、 $ P$ は可逆で、

$\displaystyle P^{-1}AP= {\operatorname{diagonal}}(\lambda_1,\dots, \lambda_n)
\tag{★}
$

が成り立つ。(★)を $ A$ の対角化という。

命題 14.2   $ P$$ n$ 次の正方行列、$ P$ は可逆だとする。 このとき、任意の$ n$ 次正方行列 $ A_1,A_2$ に対して次のことがなりたつ。
  1. $ P^{-1} (c_1A_1+ c_2A_2)P= c_1 P^{-1} A_1 P + c_2 P^{-1} A_2P$ . ( $ c_1,c_2 \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ ).
  2. $ P^{-1} (A_1 A_2)P= P^{-1} A_1 P P^{-1} A_2P$ .

命題 14.3   $ A,P$$ n$ 次の正方行列、$ P$ は可逆だとする。 $ B=P^{-1} AP$ とおくとき、$ B$ が対角行列であるか否かにかかわらず、
  1. 任意の多項式 $ f(x)$ に対して、
    1. $ P^{-1}f(A)P=f(B) $
    2. $ \operatorname{det}(f(A))=\operatorname{det}(f(B)).$ .
    3. $ A$ の固有多項式と $ B$ の固有多項式は等しい。

  2. とくに、 $ P^{-1} A P={\operatorname{diagonal}}(\lambda_1\dots, \lambda_n)$ のときには、
    1. $ f(A)=P {\operatorname{diagonal}}(f(\lambda_1),\dots,f(\lambda_n))P^{-1}.$ .
    2. $ \operatorname{det}(f(A))=f(\lambda_1)\cdot \dots\cdot f(\lambda_n).$
    3. $ A$ の固有多項式は $ (x-\lambda_1)(x-\lambda_2)\dots (x-\lambda_n)$ と等しい。

*上の命題の極限を考えることにより、行列の $ \exp,\sin,\cos$ も 同様に計算することができる。これは微分方程式の解法などでとくに有用である。

命題 14.4   $ n$ 次正方行列 $ A$ の固有値 $ \lambda_1,\dots, \lambda_k$ の固有ベクトル $ \mathbbm v_1 \dots \mathbbm v_k
$ があったとする。もし、 $ \lambda_1,\dots \lambda_k$ がどれも異なれば、 $ \mathbbm v_1 \dots \mathbbm v_k
$ は一次独立である。

系 14.1   $ n$ 次正方行列 $ A$$ n$ 個の固有値が実数で、互いに相異なれば、$ A$ は 対角化可能である。

*話を複素数にまで拡張しておくと、つぎのように単純化される。

系 14.2   $ n$ 次複素正方行列 $ A$$ n$ 個の固有値が互いに相異なれば、$ A$ は 対角化可能である。

* 行列 $ N= \displaystyle
\begin{bmatrix}
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
0 & 0 & 0
\end{bmatrix}$ の固有値は $ 0,0,0$ で、固有ベクトルは $ {}^t [1,0,0]$ の 一つだけである。よって $ N$ は対角化できない。 $ \displaystyle
\begin{bmatrix}
2 & 1 & 0 \\
0 & 2 & 1 \\
0 & 0 & 2
\end{bmatrix}=2 1_3 + N$ の固有値は $ 2,2,2$ で、対角化できない。 一般の、対角化不可能な行列については、座標変換で「ジョルダンの標準形」までは 持っていくことができる。詳しくは線形代数の進んだ成書を参考のこと。



2017-07-13