第9回目の主題 :
前回までに、 可換PID 上の有限生成加群は 上の巡回加群の直和で あることを示した。今回は の元の「素元分解」を用いて その構造をもう少し細かく吟味しよう。
は の部分環をなす。これを の中心とよぶ。
環の直積分解においては、二つの基本的な元が重要な役割を果たす。
(*) |
上の補題により、環を直積分解したいときには、 * を満たす 元 を探せばいいことがわかる。 のことを (直積分解に対応する)中心的射影と呼ぶ。 実際には、次の補題のように、中心的射影を一つ見つければその相棒は 自動的に見つかる。
可換 PID の元 が二つの「互いに素な」元の積であるとき、 剰余環 の直積分解が次のように書ける。
が存在する。
ともみなせる。
が存在する。
上の系と有限生成アーベル群の基本定理により次の系が成り立つことがわかる。
同様にして、次の命題が成り立つことがわかる。 (一般に、可換 PID の元に対しては素因数分解が一意的に存在する ということに注意しておく。)
一般に、環 に中心的射影 が存在すると、 上の加群も次のような分解を受ける。