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《素元分解環》
「素因数分解の一意性」が成り立つような環を素元分解環と呼ぶ。
ただし、
 
のような無用の分解を避けるために、
 に類するもの(可逆元)を特別扱いする
ことにする。
 に類するもの(可逆元)を特別扱いする
ことにする。
 は環であるとする。
 は環であるとする。 の元のうち、
積に関して可逆なもの(可逆元)の全体を
 の元のうち、
積に関して可逆なもの(可逆元)の全体を  であらわす。
 であらわす。
 に対して
    に対して  が成り立つ
   が成り立つ 
 ,
, 
 ,
, 
![$ {\mathbb{C}}[X]^\times={\mathbb{C}}^\times$](img11.png) .
.
環論においては、元  の性質を調べる代わりに、
 の性質を調べる代わりに、 の生成するイデアル
 の生成するイデアル  を調べるとうまくいくことがある。以下の議論でも頻繁に使われるので
注意しておくとよい。
歴史的には、一般の環では元だけの扱いに限界があって、イデアルを導入すると
うまくいくということに Dedekind が気付き、そこで展開されたイデアル論に
古典的な幾つかの議論が吸収されたのだ。
 
を調べるとうまくいくことがある。以下の議論でも頻繁に使われるので
注意しておくとよい。
歴史的には、一般の環では元だけの扱いに限界があって、イデアルを導入すると
うまくいくということに Dedekind が気付き、そこで展開されたイデアル論に
古典的な幾つかの議論が吸収されたのだ。
 の元
 の元  について、次は同値である。
 について、次は同値である。
 
 
 の元
 の元  が素元であるとは、
 が素元であるとは、
 が
 が  の素イデアルであるときにいう。
 の素イデアルであるときにいう。
 が素元分解環であるとは、
 が素元分解環であるとは、 の
任意の元
 の
任意の元  について、次のいずれかが成り立つときに言う。
 について、次のいずれかが成り立つときに言う。
 =0
=0
 
 は
 は  の素元の積に分解される。
 の素元の積に分解される。
例えば、 
 ,
 ,
![$ {\mathbb{C}}[X]$](img17.png) は素元分解環である。もっと一般に、
次のことが成り立つ。
 は素元分解環である。もっと一般に、
次のことが成り立つ。
 が単項イデアル整域ならば、
 が単項イデアル整域ならば、 は素元分解環である。
 は素元分解環である。この定理の証明(今週と来週)はいくつかの段階にわかれる。
まず、次の事実の拡張からはじめよう。
 があって、
 があって、  は
 は  で割り切れ、
かつ
 で割り切れ、
かつ  が互いに素であるとする。このとき、
 が互いに素であるとする。このとき、 は
 は  で割り切れる。
 で割り切れる。 が互いに素なら、
 が互いに素なら、
 であったことを思い起こすと、
次の補題は上の事実の拡張であることが分かるだろう。
 であったことを思い起こすと、
次の補題は上の事実の拡張であることが分かるだろう。
 の元
 の元  があって、
 があって、  は
 は  で割り切れ、かつ
 で割り切れ、かつ
 であるとする。このとき、
 であるとする。このとき、 は
 は  で割り切れる。
 で割り切れる。
 は可換環であるとする。
 は可換環であるとする。 の元
 の元  が既約であるとは、
 
が既約であるとは、 
 または
    または  
のときに言う。
 は整域であるとする。このとき、
 は整域であるとする。このとき、
 の素元は、必ず既約である。
 の素元は、必ず既約である。
 の既約元は、必ずしも素元とは限らない。
 の既約元は、必ずしも素元とは限らない。
 が単項イデアル環で、なおかつ整域ならば、
 が単項イデアル環で、なおかつ整域ならば、
 の既約元は必ず素元である。
 の既約元は必ず素元である。
上の補題により、単項イデアル整域  の元
 の元  を素因数分解する手順は
次のようになる。
 を素因数分解する手順は
次のようになる。
 または
 または 
 ならば、おしまい。
 ならば、おしまい。
 が素元ならば、やはりおしまい。
 が素元ならば、やはりおしまい。
 (
 (
 )と
分解できる。
)と
分解できる。
 について同様のことをする。
(例えば
 について同様のことをする。
(例えば  が 素元でなければ、
 が 素元でなければ、  となる。)
 となる。)
あとの問題は、一つの元が無限に分解されていかないか、ということである。 次の補題がその問題に答える:
 のイデアルの増大列
 のイデアルの増大列
 
は必ずどこかで止まる。すなわちある
 があって、
 があって、
 
がなりたつ。
(参考)
![$ {\mathbb{C}}[X]$](img17.png) の部分環
 の部分環 
![$ R={\mathbb{C}}[X^2,X^3]$](img34.png) を考えると、
 を考えると、
![$\displaystyle R=\{f\in {\mathbb{C}}[X];$](img35.png) $f$ の $X$ に関する一次の項の係数は $0$
    $f$ の $X$ に関する一次の項の係数は $0$ 
であることが分かる。ここで、
 とおくと、
 とおくと、 であるが、
 であるが、
 は
 は  のなかで既約である
 のなかで既約である
 は
 は  のなかで
 のなかで  の約数ではない。
 の約数ではない。
![% latex2html id marker 1266
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{5}] $](img40.png) のなかの
 のなかの
 
なども、素因数分解の非一意性の例である。
 の元
 の元  について、
 
について、
 
が成り立つことを示しなさい。
 の定義
 の定義
 かつ
    かつ  
を有効に使うこと。
 が
 が 
 において互いに素(すなわち、
 において互いに素(すなわち、 の最大公約数が
 の最大公約数が  ) 
ならば、
) 
ならば、
 
![% latex2html id marker 1299
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{-1}]$](img50.png) の元としても互いに素であることを
証明せよ。
 の元としても互いに素であることを
証明せよ。 
![% latex2html id marker 1306
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{-1}]$](img51.png) が素元分解環であることをもちいて、
互いに素な
 が素元分解環であることをもちいて、
互いに素な 
 に対して
 に対して 
![% latex2html id marker 1310
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{-1}]$](img52.png) の元として
 の元として 
 
が成り立つことを示しなさい。
 
 
 
 
