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1=3

代数学 IA No.3要約

群とは操作の集まりでした。演算が定義されるということ、 (つまり、演算について閉じていること)、 「何もしない」という操作、各操作の逆操作がその集まりに含まれるという事 が大事なのでした。

\fbox{今日のテーマ} 《有限群》

$ \bullet$ 元の数が有限であるような群を、有限群と言う。

$ \bullet$$ G$ の元の個数を、$ G$ の位数と言い、$ \vert G\vert$ で表す。

有限群の重要な例として、有限対称群、有限巡回群、二面体群がある。

置換

$\displaystyle a=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
3&1&2&4
\end{pmatrix}$

は、 $ 1,2,3,4$ がそれぞれ《変身》して $ 3,1,2,4$ になると 言う操作であって、これを、

$\displaystyle a(1)=3, a(2)=1,a(3)=2,a(4)=4
$

というようにも書く。

二つの置換の結合(演算)は通常《後ろから読》む。たとえば、

% latex2html id marker 921
$\displaystyle a=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
2&3&4&1
\end{pmatrix},
\quad
b=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
3&1&2&4
\end{pmatrix}$

の掛け算 $ ab$ は、

$\displaystyle ab=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
2&3&4&1
\end{pmatrix}\begin{pmatr...
...&4 \\
3&1&2&4
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
4&2&3&1
\end{pmatrix}$

つまり、例えば $ 1$$ b$$ 3$ に化けて、次に $ a$$ 3$$ 4$ に化けるので、 結果として $ 1$$ ab$ によって $ 4$ に化けることになる。

いくつかの元 $ \{a_1,a_2,\dots, a_r\}$ を順繰りに変える置換、すなわち

$\displaystyle \begin{pmatrix}
a_1 & a_2& \dots & a_{r-1} &a_r \\
a_2 & a_3& \dots & a_r &1
\end{pmatrix}$

のことを 巡回置換と呼び、 $ (a_1,a_2,\dots a_r)$ と書き表す。

定義 3.1   集合 $ S$ が与えられたとする。このとき $ S$ から $ S$ への全単射の全体は 写像の合成に関して群をなす。これを $ S$ 上の対称群と言う。 有限集合上の対称群を有限対称群と呼ぶ。$ n$ 個の元からなる 集合 $ \{1,2,\dots,n\}$ の上の対称群を、$ n$ 次の対称群と呼ぶ。

要は、$ n$ 個の元 $ 1,\dots,n$ の置換全体のなす群が $ n$ 次の対称群である。

定理 3.1   $ n$ 次の対称群の位数は $ n!$ である。

「一つの元から生成されていて、元の数が有限である巡回群を、 有限巡回群という」というのが正統的な定義なのだが、 ここでは「生成する」の定義を後回しにして、 つぎのような間に合わせな的な定義をしておくことにする。

定義 3.2   $ \frak S_n$ の元 $ a$ $ a=(1\ 2\ \dots\ n-1\ n)$ で定義する。 このとき、

$\displaystyle C_n=\{e, a, a^2,a^3,a^4,\dots, a^{-1},a^{-2},\dots\}
$

を位数$ n$ の有限巡回群と呼ぶ。

注意

上の元 $ a$ について、

\begin{displaymath}
% latex2html id marker 1002a(k)=
\begin{cases}
k+1 &(k\neq n \text{のとき}) \\
1 &(k=n \text{のとき})
\end{cases}\end{displaymath}

と書ける。だが、場合分けをするより、もっと楽な方法がある。 $ n$ を決めておいて、 % latex2html id marker 1006
$ 1\leq k\leq n$ の範囲では、$ k $ のかわりに $ [k]$ という記号を導入する。 (どの $ n$ を考えているかはっきりさせたい時には $ [k]_n$ と書くこともある。) つぎに、一般の整数について、順繰りに、

  $\displaystyle [n+1]=[1], [n+2]=[2], [n+3]=[3],\dots,$    
  $\displaystyle [0]=[n], [-1]=[n-1],[-2]=[n-2],\dots$    

等と約束する。 例えば、$ n=13$ ならば、

  $\displaystyle [14]=[1], [15]=[2], [16]=[3],\dots,$    
  $\displaystyle [0]=[13], [-1]=[12],[-2]=[10],\dots,$    
  $\displaystyle [128]=[10],[-128]=[2],$   etc    

$ [k]=[l]$ かどうかは、 $ k-l$$ n$ で割り切れるかどうかで 判断できることに注意しておこう。

以上のようにしておいて、 $ C_n$ $ \{[1],[2],[3],\dots,[n]\}$ の置換だとみなすと、

$\displaystyle a([k])=[k+1]
$

と書ける。これは以後の定理の証明に非常に有効である。

定理 3.2   上の $ C_n$ を考え、 $ a=(1\ 2\ \dots\ n-1\ n)$ とおく。 このとき、
  1. $ a^n=e$ である。($ e$ は恒等置換)
  2. 整数 $ k,l$ に対して、

    $\displaystyle a^k=a^l
$

    が成り立つということと、$ k-l$$ n$ の倍数であるということとは、 同値である。
  3. $ C_n$ の位数は $ n$ である。

$ n$ 角形をそれ自身に重ねあわせる操作のなす群を二面体群と言う。 これをここでは次のように導入する。

定義 3.3   $ n$$ 3$ 以上の整数であるとする。

$ \frak S_n$ のなかで、 $ a=(1\ 2\ \dots\ n-1\ n)$ と、

$\displaystyle b=
\begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 & \dots & n-1 & n \\
n & n-1 & n-2 & \dots & 2 & 1 \\
\end{pmatrix}$

とで生成された群を $ \mathbb{D}_n$ と書き、二面体群と言う。

注意

等式

$\displaystyle b(k)=n-k+1
$

が成り立つ。 さらに、 先ほど述べた $ [k]$ という記号を用いると、

$\displaystyle b([k])=[-k+1]
$

が成り立つ。

定理 3.3  
  1. 等式 $ a^n=e,b^2=e,bab^{-1}=a^{-1}$ が成り立つ。
  2. $ a^k b a^l= a^{k-l}b $ が全ての整数 $ k,l$ について成り立つ。
  3. $ \mathbb{D}_n$ の元は

    $\displaystyle e,a,a^2,a^3,\dots,a^{n-1},
b,ab,a^2b,a^3b,\dots,a^{n-1}b
$

    $ 2n$ 個ある。特に、 $ \mathbb{D}_n$ の位数は $ 2n$ である。

※レポート問題

次の中から一問を選んで、レポートとして提出しなさい。

(期限:次の講義の終了時まで。)

(I).
$ a^k (b( a^l([x])))$ および $ a^{k-l}(b([x])) $ を計算することにより、 定理 5.3の 2.を証明しなさい。


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2012-07-12