next up previous
Next: About this document ...

線形代数学概論 A No.14要約

\fbox{今日のテーマ}

復習 ベクトル空間の次元という量を使って、今までのことを 少し整理してみよう。

定義 14.1   ベクトル空間 $ V$次元とは、$ V$ のなかの一次独立な 元の最大個数である。$ V$ の次元を $ \dim(V)$ と書く。

$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^d$ の基本ベクトル $ \mathbf e_1,\mathbf e_2,\dots \mathbf e_d$ は 一次独立であるから、 $ \dim($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 831
$ ^d)\geq d$ が分かる。 逆に、つぎのことが行列の標準形の議論から分かる。

命題 14.1   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^d$$ d+1$ 個以上のベクトルは必ず一次従属である。

よって、(当たり前に見えるが定義通に確かめようとすると自明ではない)つぎのことが 成り立つ。

定理 14.2   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^d$ の次元はちょうど $ d$ である。

すでに述べたとおり(命題12.2)、正則行列の $ d$ 個のベクトルは 必ず一次独立であった。

逆に、 つぎのことがわかる。

命題 14.3   $ d$ 次元ベクトル空間 $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^d$ の一次独立な $ d$ 個のベクトル $ \mathbf v_1,\mathbf v_2,\dots, \mathbf v_d$ があったとする。 このとき、それらを並べでできる行列

$\displaystyle P=
(\mathbf v_1\ \mathbf v_2 \dots \mathbf v_d)
$

は正則行列である。

$ d$ 次元ベクトル空間 $ V=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^d$$ d$ 個の一次独立な元を、$ V$基底 と呼ぶ。基底を選ぶということは、$ V$ の座標をひとつ選ぶという事に 相当する。 基底という言葉を使うと、上のことは次のように整理される。

定理 14.4   $ d$ 次元ベクトル空間 $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^d$ の ベクトル $ \mathbf v_1,\mathbf v_2,\dots, \mathbf v_d$ が基底であることと、 それらを並べてできる行列

$\displaystyle P=
(\mathbf v_1\ \mathbf v_2 \dots \mathbf v_d)
$

が正則行列であることは同値である。

行列の階数という概念も、次元を用いて述べることができる。

命題 14.5   行列 $ A\in M_{m,n}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ の階数とは、$ A$ の列ベクトルのうち、一次独立なももの 最大個数であり、これはまた $ A$ の像

$\displaystyle \operatorname{Image}(A)=\{A \mathbf x \vert \mathbf x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ^n \}
$

の次元に等しい。

行列の両側変形による標準形は、つぎのことを教えてくれる。

定理 14.6 (次元定理)   $ A\in M_{m,n}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ が決まっているとする。$ A$ $ V=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ から $ W=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ への線形写像と考えよう。このとき、

$\displaystyle \operatorname{rank}(A)=\dim(\operatorname{Image}(A))= \dim (V)-\dim(\operatorname{Ker}(A)).
$

つぎのことが出来れば一学期合格と言えるだろう。

  1. 上の定理が、どういうことを述べているか、分かる。
  2. 行列の両側変形が具体的に計算できる。
  3. 計算結果を上の定理と比べて解釈できる。



2012-11-16