第14回目の主題 :
写像が与えられていなくても、同値関係を与えることはできる。
に同値関係 があたえられているとき、 における のクラスを だとか、 で表現することが多い。
で定義する。このとき、
集合 の商集合 から 別の集合 への写像 を定義することを考えてみよう。 各クラス がどこに行くかを決めることになる。 よくあるのは、 の代表をひとつ取ってきて、それの行き先を きめるやり方である。2つのケースがある。
数学では、民主主義的な場合を考える必要性がよく起こる。 そこでこれについて説明しよう。
(◎) |
で定義することができる。
条件(◎)をみたすとき、 は 代表元の取り方によらずにうまく定義されるという。
「うまく定義される」という語句は文字通り定義が正しく行われている ことを述べている言葉であるから、 この場合のみではなくていろいろな場面で出現しうる。
で定義し、この同値関係に関する のクラスを で書き表すことにする。 このとき、
上の(2)では、ハッキリ言えば定義が間違っているわけだが、 「貴族主義的な」アプローチをとってこれを修正することにより定義を 正しいものに直すことは可能である。 例えば、 の任意の元 にたいして、 の「代表」 として、 「 の元の中で、非負で最小のもの」をとることにする(定義を改善する)と、
はうまく定義された写像である。 もちろんこの場合は「代表元のとり方によらない」という語句は通用しない。 むしろ代表元をシッカリ選んでいるのである。
で定義する。このとき、
はうまく定義されることを示しなさい。
実は上の問題の は により 単位円周 と同一視できることが分かる。
は と との同一視を与え、 は三角関数の倍角の公式に 対応する。 逆に言うと、倍角の公式を 知っていると の構成を思いつくことができる。