今回は、行列のジョルダンの標準形について PID 上の加群の理論の立場から 概説しよう。つぎのような基本仮定を出発点とする。
基本仮定
は体であるとし、ある正の整数
について
行列
が与えられているとする。
このとき、一変数多項式環
の
への作用が
で定まるのであった。(例3.3)これにより、 を -加群と見よう。 |
は PID であるから、一般論(命題9.7)により、 次の命題が成り立つことがわかる。
複素数体 は代数的閉体であることが知られている。任意の体 に対して、 それを含むような最小の代数的閉体 が存在することが 知られている。このような のことを の代数的閉包 と呼ぶ。
以下、 が代数的閉体のときを主に考える。このときには 上の一変数 既約多項式は一次式に限るから、次のことがわかる。
命題11.2のような基底を取れば、 上の の作用の表現を得ることができるが、 だけずらすことによって、 さらに良い基底を取ることもできる。
が取れる。
と書き下せる。行列で書くと
もしくは、基底の順番を取り換えて、
ただし はジョルダン細胞と呼ばれる次のような行列である。
とジョルダン細胞の「直和」に分解される。
のとき、基本仮定のようにして を 加群と見よう。 このとき、 は 上 で生成されることを示しなさい。