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解析学 IA No.12要約

\fbox{今日のテーマ} 多変数関数の(リーマン)積分(3) 変数変換。

次の定理は行列式の幾何学的意味を与える。

定理 12.1   線型写像 $ L:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m\to$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ が与えられているとする。 このとき、任意の区間直方体 $ B$ に対して、$ B$$ L$ による 像 $ L(B)$ の測度は $ B$ の測度の $ \vert\operatorname{det}(L)\vert$ 倍である。 もっと一般に、 任意の測度確定集合 $ S$$ L$ による像 $ L(S)$ は測度確定であって、 その測度は、元の測度 $ \mu(S)$ $ \vert\operatorname{det}(L)\vert$ 倍である。 すなわち、

$\displaystyle \mu(L(S))=\vert\operatorname{det}(L)\vert \mu(S).
$

がなりたつ。

証明. 大きな行列を書くのを避けるために、$ m=2$ のときで議論しよう。 逆行列の計算法のところで(おそらく)習ったように、二次行列 $ A$ は 列基本変形を繰り返すことにより対角行列にできる。 列基本変形次のような「基本行列」を $ A$ に右から書けることにより 実現できるのであった。

% latex2html id marker 862
$\displaystyle \begin{pmatrix}a & 0  0 & b \end{pmatrix} \qquad (a,b\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle )$ (対角行列)

% latex2html id marker 866
$\displaystyle \begin{pmatrix}1 & k  0 & 1 \end{pmatrix} ,\quad \begin{pmatrix}1 & 0  l & 1 \end{pmatrix} \qquad (k,l\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle )$ (「シフト」行列)

これらの行列の逆行列も必ずこれらのタイプであることにも注意しよう。 すると、$ A$ はこれらのタイプの行列の何個かの積に分解できることがわかる。 これらのタイプの行列については、定理の結論は正しく、 行列式も測度の倍率も行列の積について乗法的に振舞うから、 結局どの行列についても定理は正しい。 % latex2html id marker 853
$ \qedsymbol$

$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ の開集合 $ U$ が与えられていて、 写像 $ \varphi: U \to$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$$ C^1$ -級のとき、 $ \varphi$$ U$ の各点 $ a$ において $ D\varphi\vert _a$ で 近似されるのであった。したがって、

定理 12.2   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ の開集合 $ U$ 上の $ C^1$ 級関数 $ \varphi$ が 測度確定集合 $ S$ $ S'=\varphi(S)$ の全単射を与えるとき、

$\displaystyle \int_{S'} f(y) d \mu
=\int_{S} f(\varphi( x)) \vert\operatorname{det}((D\varphi)(x)\vert d \mu
$

がなりたつ。

これはつぎのように書いても良い。

  $\displaystyle \int_{S'} f(y_1,\dots y_m) d y_1 d y_2 \dots y_m$    
$\displaystyle =$ $\displaystyle \int_S f(y_1(x),\dots y_m(x)) \left\vert \operatorname{det} \left( \frac{\partial y_i}{\partial x_j}(x) \right ) \right \vert d x_1 d x_2 \dots x_m$    

行列式

$\displaystyle \operatorname{det}
\left(
\frac{\partial y_i}{\partial x_j}(x)
\right )
$

のことを変換のヤコビアン(Jacobian)と呼ぶ。

問題 12.1  

  $\displaystyle y_1=x_1 \cos(x_2)$    
  $\displaystyle y_2=x_2 \sin(x_2)$    

の変換のヤコビアンを求めることにより、

% latex2html id marker 923
$\displaystyle D=\{y_1,y_2; y_1>0,y_2>0, \sqrt{y_1^2+y_2^2}<R\}
$

上の積分

$\displaystyle \int_{D} e^{-(y_1^2+y_2^2)} d y_1 d y_2
$

を計算せよ。

注意、定理の一般の状況にあわせるために、 変数名として $ y_1,y_2, x_1,x_2$ をもちいたが、 上の問題はアカラサマに「極座標」への変換であるから

% latex2html id marker 929
$\displaystyle D_1=\{x,y; x>0,y>0, \sqrt{x^2+y^2}<R\}
$

上の積分

$\displaystyle \int_{D_1} e^{-(x^2+y^2)} d x d y
$

を変換

  $\displaystyle x=r \cos(\theta)$    
  $\displaystyle y=r \sin(\theta)$    

$ (r,\theta)$ の積分に変数変換して計算せよ。 と言っても良かった。というか、その方が見やすいだろう。 どちらのスタイルで解答しても良いことにする。


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2009-07-22