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解析学 IA No.6要約

\fbox{今日のテーマ} 《積分による表示、多変数関数のテイラー展開。》

今回の話では、つぎのようなことをたびたび用いる。

補題 6.1   $ [a,b]$ 上定義された(実数値もしくはベクトル値)連続関数 $ f$ に対して

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$\displaystyle \vert\vert\int_a^b f(t)d t \vert\vert \leq \int_a^b \vert\vert f(t)\vert\vert d t
$

が成り立つ。

先週、定理5.3 の証明が残っていた。 次のような積分の計算が基本になる。 まずは微積分の基本定理から容易に従う一変数の場合。

$\displaystyle f(x)=f(a)+(x-a)\int_0^1 f'(a+(x-a) t)
$

次は、それを用いた二変数の場合。

$\displaystyle f(x,y)$ $\displaystyle =f(a,y)+(x-a)\int_0^1 f_x(a+(x-a)t ,y) dt$    
$\displaystyle =$ $\displaystyle f(a,b) + (y-b)\int_0^1 f_y(a,b+(y-b)t )dt$    
  $\displaystyle +(x-a)\int_0^1 f_x(a+(x-a)t ,y) dt$    

ついでに、三変数だと以下のようになる。

$\displaystyle f(x,y,z) =$ $\displaystyle f(a,b,z) + (y-b)\int_0^1 f_y(a,b+(y-b)t,z )dt$    
  $\displaystyle +(x-a)\int_0^1 f_x(a+(x-a)t ,y,z) dt$    
$\displaystyle =$ $\displaystyle f(a,b,c) + (z-c) \int_0^1 f_z(a,b,c+(z-c)t )dt$    
  $\displaystyle + (y-b)\int_0^1 f_y(a,b+(y-b)t,z )dt$    
  $\displaystyle +(x-a)\int_0^1 f_x(a+(x-a)t ,y,z) dt$    

以上は、偏微分は「軸方向の変化を記述する」ということからくる 制限の下で、苦労して $ (a,b,c)$ から $ (x,y,z)$ に近づいた式である。 一旦定理5.3 が確定した後は、$ C^1$ 級関数は自動的に全微分可能である から、「まっすぐ」近づくほうがわかりやすい。

定理 6.1   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ の開集合 $ U$ から $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ への $ C^1$ 級写像 $ f$ について、 $ U$ の点 $ a$$ x=a+h$ とを含む線分が $ U$ に含まれているとするとき、等式

$\displaystyle f(a+h)=f(a)+\int_0^1 Df(a+t h) \cdot h dt
$

が成り立つ。

《高階微分》

定義 6.1   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ の開集合 $ U$ から $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ への $ C^1$ 級写像 $ f$ について、

$\displaystyle Df: U \ni a \mapsto Df(a) \in M_{m,l}($$\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle )
$

は、 $ M_{m,l}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^{m l}$ と同一視することで、(全)微分可能性を 議論することができる。$ D f$$ x=a$ での微分を

$\displaystyle D^2 f \vert _{x=a}
$

と書いて, $ f$ の二階微分とよぶ。 つまり、 $ D^2 f\vert _{x=a}$ は、 $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ から $ M_{m,l}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ への線型写像である。 $ D^2 f\vert _{x=a}$ が各 $ a\in U$ について存在して、連続であるとき、$ f$$ C^2$であると呼ぶ。

命題 6.2   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ の開集合 $ U$ 上定義された $ C^2$ 級 写像 $ f : U \to$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ について、

$\displaystyle f(a+h) =$ $\displaystyle f(a)+ Df(a)\cdot h + \frac{1}{2}\int _0^1 \int _0^t D^2 (f(a+ts h)\cdot h)\cdot h  d s d t$    
$\displaystyle =$ $\displaystyle f(a)+ Df(a)\cdot h + \frac{1}{2} (D^2f(a)\cdot h) \cdot h + o (\vert\vert h\vert\vert^2)$    

が成り立つ。

微分と同様に高階微分も偏微分を用いて記述できる。

命題 6.3   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ の開集合 $ U$ から $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ への写像 $ f$ が与えられているとする。 このとき、
  1. $ f$$ C^2$ 級であることは、 各変数に関する一回偏導関数 $ f_{x_1},f_{x_2},\dots ,f_{x_l}$ が 存在して、そのそれぞれが $ C^1$ 級であることと同値である。
  2. $ f$$ C^2$ 級である時、

    $\displaystyle f_{{x_i} {x_j}}= f_{{x_j} {x_i}}
$

    がなりたつ。

(2)の証明では二変数の場合が本質的である。

$\displaystyle f(x+h,y+k)-f(x,y+k)-f(x+h,y)+ f(x,y)
$

を二つの道筋で積分表示することになる。

※レポート問題

(期限:次の講義の終了時まで。)

問題 6.1   定理 6.1 に基づいて、 $ f(x,y)=\sin(x y^2)$ について、

$\displaystyle f(a+h,b+k)
$

$ h,k$ についての1次近似を求めなさい。すなわち、

$\displaystyle f(a+h,b+k)= c_{00} + c_{10} h + c_{01} k
+ o(\vert\vert(h,k)\vert\vert)
$

なる実数 $ c_{00},\dots, c_{01}$ を求めなさい。 できることならば剰余項の積分表示も求めてみること。


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2009-05-27