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解析学 IA No.3要約

\fbox{今日のテーマ} 《多変数関数の連続性と極限(2)》 「写像」と「関数」は同じ意味の言葉ではあるが、ニュアンスとしては 「関数」といえば値集合として数集合のみを許すことが多い。 今日はそんな「関数」に限らずもっと一般の「写像」の連続性も 一緒に議論しよう。詳しくは位相空間論で勉強するはずである。

定義 3.1   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の部分集合 $ S$ から $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ の部分集合 $ T$ への写像 $ f$ が 点 $ P\in S$連続であるとは、

$\displaystyle \forall \epsilon \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle _{>0} \exists \delta \in$$\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle _{>0}
\left (
Q\in S\cap B_\delta(P) \implies
d(f(Q),f(P))<\epsilon
\right )
$

を満たすときに言う。

$ f$$ S$ のどの点でも連続であるとき、$ f$連続であるという。

$ d(f(Q),f(P))<\epsilon$ の部分は 「 $ f(Q)\in B_\epsilon (f(P))$ 」と言い代えてももちろんよい。 「連続性」という解析学的なことがらが「球の位置関係」という幾何学的なことがらに 翻訳されていることに注意。

実際の関数の連続性は、基本的な関数の連続性を組み合わせてだすことがおおい。 基本的な関数自身の連続性はとなると、 これは結局上の定義に戻って証明することになる。

補題 3.1   次の各写像は連続である。
  1. $ f_+:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y)\mapsto x+y \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$
  2. $ f_-:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y)\mapsto x-y \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$
  3. $ f_{\times}:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y)\mapsto x y \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$
  4. $ \operatorname{inv}:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \setminus \{0\} \ni x \mapsto x^{-1} \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$

補題 3.2   集合 $ S \subset$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ , $ T \subset$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ , $ U \subset$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ と 写像 $ f: S\to T$ , $ g: T\to U$ が与えられているとする。 $ f$$ P\in S$ で連続で、かつ $ g$$ f(P)\in T$ で連続ならば、 合成写像 $ g\circ f$$ P$ で連続である。とくに、連続写像の合成写像は 連続である。

連続写像を組み合わせて新しい写像を作るためには、 幾つかの「退屈な写像」(包含写像、射影など) について連続性を言わなければならない。 ここでそれをやると二度手間になってしまううえに、 位相空間の知識なしには中途半端にしかできないので、 それらはおとなしく位相空間論に任せよう。

◎ ランダウの $ o$ .

定義 3.2   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の部分集合 $ X$ 上の関数 $ a,b$ にたいして、

% latex2html id marker 990
$\displaystyle \forall \epsilon>0 \exists r>0
\quad( Q\in B_r(P)\cap X \implies \vert a(Q)\vert\leq \epsilon \vert b(Q)\vert)
$

が成り立つとき、

$\displaystyle a(Q)=o(b(Q))
$

と書いて、$ a$$ b$ に比べて無視できる(ほど小さい)という。

上の定義の式は、ほぼ、

$\displaystyle \lim_{Q \to P} \left\vert \frac{a(Q)}{b(Q)} \right \vert\to 0
$

と同値である。ただ、$ b=0$ の点で困るから、上の形にしてあるのである。

上の記法を用いると、$ f$$ P$ で連続であることは、

$\displaystyle f(Q)=f(P)+o(1)
$

と同値である。

※レポート問題

(期限:次の講義の終了時まで。)

問題 3.1   写像 $ f:$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y) \to (x^2, x^3+y^3) \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ が 連続であることを示しなさい。



2009-04-23