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解析学 IA No.2要約

\fbox{今日のテーマ} 《多変数関数の連続性と極限》

定義 2.1 (``4.1.3'')   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の部分集合 $ S$ 上で定義された関数 $ f$ の、点 $ P$ での極限$ \alpha$ であるとは、

$\displaystyle \forall \epsilon \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle _{>0} \exists \delta \in$$\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle _{>0}
\left(
Q\in S\cap (B_\delta(P)\setminus P) \implies \vert f(Q)-\alpha\vert<\epsilon
\right )
$

を満たすときに言う。

この定義は一変数の場合と形式的には同じであるが、一変数の場合と違って 多変数の場合には「点への近づき方」がいろいろあるので注意が必要である。

補題 2.1   上の定義で、 $ S$ の点列 $ \{P_j\}_{j=1}^\infty$ で、 $ P$ に収束するものがあったと仮定する。 このとき、

$\displaystyle \lim_{j\to \infty} f(P_j)=\alpha.
$

とくに、 極限 $ \alpha$ は一意的である。

定義 2.2   上の一意的な極限を

$\displaystyle \lim_{{Q\to P}\atop{Q\in S}} f(Q)
$

と書き表す。

例 2.1   極限が存在しない例。
  1. $\displaystyle f_1(x,y)=\frac{x y}{x^2+y^2}
$

    は原点 $ (0,0)$ において、極限を持たない。実際、直線 $ y=m x$ に沿って $ (x,y)$ を 0 に近づけると $ f_1(x,y)$ $ \frac{m}{1+m^2}$ に近づき、 $ m$ によってその値が異なる。
  2. $\displaystyle f_2(x,y)=\frac{x^2 y}{x^4+y^2}
$

    は 前の例の $ (x,y)$$ (x^2,y)$ を 代入したに過ぎないので、 原点 $ (0,0)$ において、極限を持たないことがわかる。 ただし、前の例のような「直線に沿って近づく」分析だけでは 極限の有無を判定できないことに注意。

定義 2.3 (``4.1.4'')   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の部分集合 $ S$ 上で定義された関数 $ f$ が点 $ P$連続であるとは、

$\displaystyle \forall \epsilon \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle _{>0} \exists \delta \in$$\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle _{>0}
\left (
Q\in S\cap B_\delta(P) \implies \vert f(Q)-f(P)\vert<\epsilon
\right )
$

を満たすときに言う。(考えている定義域 $ S$ が明らかな場合には $ Q\in S$ の部分は 省略することが多い。)

※レポート問題

(期限:次の講義の終了時まで。)

問題 2.1  

$\displaystyle \lim_{(x,y)\to (0,0)} \frac{xy^2}{x^2+2 y^2}
$

は存在するだろうか。理由を挙げて答えなさい。 (ヒント: $ (x,y)$$ (0,0)$ の距離を $ d$ とおくと、 $ x=d x_1, y=d y_1$ となる $ (x_1,y_1)$ が存在して、 $ x_1^2+y_1^2=1$ . $ d,x_1,y_1$ を用いて上の極限を表現してみよ。)



2009-04-14