定義とは、 言葉の使い方のとりきめのことである。 数学では、どのような言葉も、そのような取り決めなしで使われることはない。 (ただし、「整数」「有理数」、「和」、「積」などの言葉をきちんと定義するのは 手間がかかる。 それらについて詳細に定義するのは この講義では控える。 (端的に言えば、整数は帰納法を援用して定義し、 有理数は整数の「商」 に適当な「等しいかどうかの判定規則」と 定義する。) それらについて詳細に定義するのは この講義では控える。 実数は有理数の極限として 定義するのだが、今日はその「極限」の話題である。)
と とはなにか。
は、「どんな に対しても、 がなりたつ」という意味。
は、「なにかある一つの に対しては、 がなりたつ」という意味で用いる。
正の整数の全体のことをこの講義では と書く。 数列とは、数学的には次のように定義できる。
数列が「収束する」ということの厳密な定義をしよう。 それには、絶対値を用いる。
(ただし平方根は0以上のほうを選ぶ。)
次の三角不等式も実は高次元の場合にも成り立つ。
がなりたつ。
いよいよ収束性の定義を述べよう。
がなりたつときに言う。
で定義するとき、 は何かある値に収束するだろうか。 上の定義に基づいて理由を述べて答えなさい。
(証明) 背理法で、 がある数 に収束したとする。 収束の定義の として を採用しよう。 ある が存在して、
ならばいつでも | (※) |
がわかり、
がわかる。
となって矛盾である。
よって、 はいかなる値にも収束しない。
で定義するとき、 は何かある値に収束するだろうか。 上の定義に基づいて理由を述べて答えなさい。
(証明) 与えられた にたいして、 として、 より大きい整数を一つとっておく。 (そのようなもの(すなわち与えられた実数よりも大きな整数) が存在することは、「アルキメデスの原理」として 保証されているが、マアさしあたっては当り前だと思っても良い。)
この が収束の定義の の役割を果たすことを示そう。 実際、 なる任意の にたいして、
となって、いずれの場合にせよ が成り立つからである。
で定義するとき、 は何かある値に収束するだろうか。 上の定義に基づいて理由を述べて答えなさい。