例には次のような効用がある。
例を挙げるときには、次のことに注意すると良い。
このように相手にも分かるように、できるだけ具体的に 指摘したほうがよい。
より大きな実数は存在する。
という命題は正しいが、これは より大きな実数の存在(たとえば、 ) を頭で思い浮かべているからそう思うのであって、 その 頭の中の考えを取り出して、
○ は実数であって、 より大きい
と言ったほうがよい。
前回の問題(2) でも 式だけ計算して、つまり、
の計算だけして、両者が等しくないと即断すべきではない。 実際の両者が異るような実数 の例が存在することを 示すべきである。さもなければ
という命題を証明することになるが、これはそれなりに難しい。 実数体の代わりに、有限体の場合には命題 2.1は 実はウソなのだ。)
複素数についてもう少し関連する定義を書いておこう。 複素数 は、 ( は実数)と一意に書けたのであった。 は を満たす「数」である。これのことを とか、 とか呼び続けてもよいのであるが、ここでは記号の節約のために 以降は と書こう。 はしばしば虚数単位と呼ばれる。
複素数は実部と虚部で与えてもいいのだが、それでは値打ちが少ない。 代わりに複素共役を使うことを考えよう。
複素数の定義も思い出してみよう。
に対して、その複素共役は
である。
転置行列に関する一般論により、つぎのことが成り立つことがわかる。
さらに、
であることが分かる。
にも注意しよう。