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代数学 I No.13要約

\fbox{今日のテーマ} 《環の直積分解・105減算》

一つの環を環の直積に分解すると楽なことがある。

環を直積分解するときには、対応する射影を求めるのがポイントになる。

定義 13.1   $ R_1,R_2$ は環であるとする。このとき、$ R_1,R_2$ の環としての直積 とは、デカルト積集合 $ R_1\times R_2$ の上に、 次のような演算を定義したものである。

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$\displaystyle (a,b) + (c,d)=(a+c,b+d), \quad (a,b)\times (c,d)= (ac,bd)
$

$ R_1$$ R_2$ の環としての直積を、普通 $ R_1\times R_2$ と書く。

補題 13.1   $ R_1,R_2$ は環であるとする。このとき、
  1. $ R_1\times R_2$ は環になる。
  2. $ R_1,R_2$ の単位元 がそれぞれ $ 1_{R_1},1_{R_2}$ とすると、 $ R_1\times R_2$ の単位元は $ (1_{R_1},1_{R_2})$ である。
  3. $ R_1,R_2$ がともに可換ならば、 $ R_1\times R_2$ も可換である。

例 13.1 (環の直積分解の具体例)  
  1. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/12{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/3{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\times {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/4{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ と同型である。
  2. $ {\mathbb{C}}[X]/(X^2-X)$ $ {\mathbb{C}}[X]/(X)\times {\mathbb{C}}[X]/(X-1)$ と同型である。

環の直積分解においては、二つの基本的な元が重要な役割を果たす。

補題 13.2  
  1. $ R_1,R_2$ は単位元をもつ可換環であるとする。このとき $ R_1\times R_2$ の元 $ e_1,e_2$ を、 $ e_1=(1,0),e_2=(0,1)$ によって定めると、次のことが 成り立つ。

    $\displaystyle e_1^2=e_1, e_2^2=e_2, e_1+e_2=1, e_1e_2=0$ (★)

  2. $ R$ は単位元をもつ可換環であるとする。もし $ R$ の元 $ e_1,e_2$ で、 $ ($$ )$ を満たすものが存在すれば、 $ R$ $ R/(e_1) \times R/( e_2)$ と 同型になる。

上の補題により、環を直積分解したいときには、 $ ($$ )$ を満たす 元 $ e_1,e_2$ を探せばいいことがわかる。$ e_1,e_2$ のことを (直積分解に対応する)射影と呼ぶ。

※三つの環 $ R_1,R_2,R_3$ の直積も二つの場合と同様に定義される。 環 $ (R_1\times R_2)\times R_3$ $ R_1\times R_2\times R_3$ と 同型である。4つ以上でも同様。

※レポート問題

つぎのうち一問を選択して解きなさい。 (期限:次の講義の終了時まで。)

(I).
$ 1000$ で割ると $ 12$ 余り、 $ 1003$ で割ると $ 34$ 余るような整数 $ n$ の例を一つ求めよ(途中の計算はある程度省略してよい。 ただし求めた方法は書いておくこと。)

(II).
$ X^3+1$ で割ると $ X+1$ 余り、$ X^2+2$ で割ると $ X$ 余るような $ {\mathbb{C}}[X]$ の 元 $ p(X)$ の例を一つ求めよ、。

(III).
$ a,b,c$ は、そのうちのどの二つも相異なるような複素数とし、 $ {\mathbb{C}}[X]$ の元 $ p(X)$ $ X-a,X-b,X-c$ で割ったときの 余りがそれぞれ $ e,f,g  (\in {\mathbb{C}})$ であったとする。このとき、$ p$ $ (X-a)(X-b)(X-c)$ で割った余りを求めよ。(答えはある程度きれいな形にしておけば 無理に展開しなくてもよい。)

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2007-12-27