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日本語技法 No.5

論理記号の計算法。

前回までに、 and, or, not, $ \implies$ , $ \forall$ , $ \exists$ という記号について 解説した。これらには簡単な計算規則があって、それらを知っていれば 真理表などを使わなくても論理展開の正しさが楽にわかる。 以下、簡単のため $ x$ and $ y$ $ x \wedge y$ , $ x$ or $ y$$ x \vee y$ と書くことにする。

定理 5.1   $ P,Q,R$ がどのような命題であっても、つぎのことが成り立つ。 (ただし、等号は両方の真理値が一致することを表す。)
  1. (巾等律) % latex2html id marker 703
$ P \wedge P =P, \quad P \vee P = P.$
  2. (交換律) % latex2html id marker 705
$ P \wedge Q = Q \wedge P,\quad P \vee Q = Q \vee P. $
  3. (結合律) % latex2html id marker 707
$ (P \wedge Q)\wedge R = P \wedge(Q \wedge R),\quad
(P \vee Q)\vee R = P \vee(Q \vee R)$
  4. (吸収律) % latex2html id marker 709
$ (P \wedge Q)\vee P = P,\quad (P \vee Q)\wedge P = P $
  5. (分配律) % latex2html id marker 711
$ (P \wedge Q)\vee R = (P \vee R) \wedge (Q\vee R),
\quad (P \vee Q)\wedge R = (P \wedge R )\vee (Q \wedge R) $

証明には真理表を用いればよい。 どれも日常語で考えれば易しいことである。

定理 5.2 (and, or の否定)  
  1. $ \neg (P \vee Q)= (\neg P) \wedge (\neg Q )$
  2. $ \neg (P \wedge Q)= (\neg P) \vee (\neg Q )$

上のような記号列は、単に「見る」だけではなくて 「声に出して読む」習慣をつけるとよい。 「(xまたは y) の否定は、 (xでないか、または yでない。)」 等々。

定理 5.3 ( $ \forall,\exists$ の否定。)   変数 $ x$ についての 命題 $ P(x)$ について、つぎのことが成り立つ。
  1. $ \neg (\forall x (P(x)))= \exists x (\neg P(x))$
  2. $ \neg (\exists x (P(x)))= \forall x (\neg P(x))$

定理 5.4  

$\displaystyle \neg (P\implies Q) = P \wedge (\neg Q)
$

問題 5.1  

$\displaystyle \neg ((P\vee Q)\implies R) = (P \wedge (\neg R))\vee (Q \wedge (\neg R))
$

を、真理表を用いるか、または上述の公式を何度か用いることにより、 証明しなさい。 (余力のある人はこの等式の意味も考えてみると良い。)



2006-10-31