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代数学III 要約 No.9

今日のテーマ

\fbox{正規拡大}

$ K=$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上の拡大体 $ L=$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$% latex2html id marker 794
$ [\sqrt[3]{2}]$ のように、$ L$ の元 % latex2html id marker 798
$ \sqrt[3]{2}$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上の共役が必ずしも $ L$ に属するとは限らない場合がある。 そのような例と「良い」例とを区別するため、つぎの定義を用意する。

定義 9.1   $ K$ の有限次代数拡大体 $ L$$ K$ の正規代数拡大であるとは、 $ L$ の任意の元 $ a$ に対して、 $ a$$ K$ 上の最小多項式 $ f_a(X)$$ L$ 上では一次式の積に分解するときに言う。

定義から、次のことは容易に分かる。

補題 9.1   $ K$ の有限次代数拡大体 $ M$ と、そのまた有限次代数拡大体 $ L$ があったとする。 もし、$ L$$ K$ の正規代数拡大体ならば、$ L$$ M$ の正規拡大体でもある。

正規拡大の判定条件は、つぎのとおり。

補題 9.2   $ K$ とその代数拡大体 $ L$ があって、 $ L=K(a_1,a_2,\dots,a_n)$ であるとする。 このとき、$ L$$ K$ 上の正規拡大体であるための必要十分条件は、 $ a_1,a_2,\dots,a_n$ の共役がすべて $ L$ に属することである。

命題 9.1   $ K$ の任意の有限次代数拡大体 $ M$ に対して、$ M$ を部分体として含むような $ K$ の有限次代数拡大 $ L$ で、$ K$ の正規代数拡大であるようなものが 存在する。

定義 9.2   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を部分体として含む体 $ K$ にたいして、$ K$ の有限次正規代数拡大体 のことを $ K$ の(有限次)ガロア拡大と呼ぶ。

定義 9.3   体 $ K$ のガロア拡大が与えられているとする。 $ L$ の環としての自己同型で、$ K$ の元を動かさないものを $ \operatorname{Gal}(L/K)$ (または $ \operatorname{Aut}_K(L)$ )と書き、$ L$$ K$ 上のガロア群と呼ぶ。

ガロア群と、体とのあいだの関係を記述するのが、いわゆるガロア理論である。

問題 9.1  

$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上の 0 でない一変数多項式 $ f(X)$ で、

% latex2html id marker 924
$\displaystyle f(\sqrt[3]{5}+\sqrt{7})=0
$

を満たすものを一つ挙げて、その理由を述べなさい。 答えは因数分解されたかたちで書いてもよい。

問題 9.2   体 $ K$ 上の一変数多項式 $ f$ が与えられたとする。このとき、$ f$ の全ての根 を $ K$ に付け加えた体 $ L$$ K$ の正規拡大体であることを示しなさい。



2006-11-30