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代数学III 要約 No.5

今日のテーマ

\fbox{拡大体の拡大次数、体の自己同型}

定義 5.1   $ K$ の拡大体 $ L$ が与えられているとする。このとき、$ L$$ K$ 上の ベクトル空間とみなすことができる。 そのようにみたときの $ L$$ K$ ベクトル空間としての次元を $ L$$ K$ 上の 拡大次数と呼び、$ [L:K]$ で書き表す。

命題 5.1   前回の定理 4.2で、 $ L$$ K$ 上の拡大次数は $ m$ の多項式としての次数と等しい。

定理 4.2 を用いると、次のことが分かる。

定理 5.2   $ K$ の拡大体 $ L_1$$ L_2$ があって、 $ L_1=K(a_1)$ , $ L_2=K(a_2)$ をみたすような $ a_1\in L_1$ $ a_2\in L_2$ があるとする。もし、$ a_1$$ a_2$$ K$ 上の最小多項式が等しいならば、$ L_1$ から $ L_2$ への 環としての準同型写像 $ \phi$ で、 $ \phi\vert _K={\operatorname{id}}$ , かつ $ \phi(a_1)=a_2$ を 満たすものが唯一つ存在する。

上の定理の $ \phi$ は一種の「共役をとる写像」(No.1 参照)である。 とくに $ L_1$$ L_2$ とが(たまたま)等しいときが大事である。

つぎの補題は、本題からは少し外れるが、 便利なのであげておく。一部分は一学期の代数学IIでやっているはずである。

補題 5.1 (既約性の判定法)  
  1. 2次または3次の多項式 $ f(X)\in K[X]$$ K$ 上既約であるための 必要十分条件は、 $ f(a)=0$ をみたすような $ a\in K$ が存在しないことである。
  2. 4次の多項式 $ f(X)\in K[X]$$ K$ 上既約であるための 必要十分条件は、 $ f(a)=0$ をみたすような $ a\in K$ が存在せず、かつ $ f$ がいかなる2次の因数 $ g(X)\in K[X]$ ももたないことである。
  3. 整数係数の多項式 $ f\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ にたいして、 $ f$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]$ 上 可約ならば、$ f$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ 上可約である。(ガウス)
  4. $ f\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ に有理数解 % latex2html id marker 899
$ p/q$ (% latex2html id marker 901
$ p,q$ は互いに素な整数)が 存在するなら、$ p$$ f$ の定数項の約数であり、 % latex2html id marker 907
$ q$$ f$ の 最高次の係数の約数である。

問題 5.1   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]/(X^2-2)$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [Y]/((Y-1)^2-8)$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [Y]$ とは環として同型だろうか。 (理由も述べること。)



2006-11-02