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代数学 A No.7要約

\fbox{今日のテーマ} 《環の準同型定理の利用法》

例 7.1 (準同型定理の基本例1)   $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/100{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ から $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/10{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ への写像 $ f$ を、

% latex2html id marker 1002
$\displaystyle f([n]_{100})=[n]_{10} \quad \quad ($   $[?]_n$ は $$ \mathbb{Z}$/n$ \mathbb{Z}$$ における $?$ の同値類 $\displaystyle )
$

で定めると、次のことが分かる。
  1. $ f$ は写像としてうまく定義されている。 すなわち、$ f$ の定義は代表元のとり方によらない。
  2. $ f$ は環の準同型である。
  3. $ f$ の像は $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/10{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ 全体である。
  4. $ f$ の核は $ 10{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/100{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ である。
よって、準同型定理により、

$\displaystyle ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/100{\mbox{${\mathbb{Z}}$}})/(10{\mbox{${...
...box{${\mathbb{Z}}$}}) \cong {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/10 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}
$

が結論される。

例 7.2 (準同型定理の応用例1)   $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ から % latex2html id marker 1026
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{14}]$ への写像 $ f$ を、

% latex2html id marker 1030
$\displaystyle f(p)=p(\sqrt{14})
$

で定めると、次のことが分かる。
  1. $ f$ は写像としてうまく定義されている。 すなわち、$ f$ の像は % latex2html id marker 1036
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{14}]$ からはみ出さない。
  2. $ f$ は環の準同型である。
  3. $ f$ の像は % latex2html id marker 1042
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{14}]$ 全体である。
  4. $ f$ の核は % latex2html id marker 1046
$ (X^2-14){\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{14}]$ である。
よって、準同型定理により、

% latex2html id marker 1048
$\displaystyle {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]/(X^2-14){\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{14}] \cong {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[\sqrt{14}]
$

が結論される。

例 7.3 (準同型定理の応用例2)   $ A\in M_2({\mathbb{C}})$ を、

$\displaystyle A=
\begin{pmatrix}
1 &3 \\
5 &7
\end{pmatrix}$

で定め、 $ {\mathbb{C}}[X]$ から $ M_2({\mathbb{C}})$ への写像 $ f$ を、

$\displaystyle f(p)=p(A)
$

で定めると、次のことが分かる。
  1. $ f$ は環の準同型である。
  2. $ f$ の像は

    $\displaystyle {\mathbb{C}}[A]=
{\mathbb{C}}A+{\mathbb{C}}E= \{k A+ lE ; k,l \in...
...in{pmatrix}
k+l &3k \\
5k &7k+l
\end{pmatrix}; k,l \in {\mathbb{C}}
\right \}
$

    である。
  3. $ f$ の核は $ (X^2-8 X-8){\mathbb{C}}[X]$ である。
よって、準同型定理により、

$\displaystyle {\mathbb{C}}[X]/(X^2-8X-8){\mathbb{C}}[X] \cong {\mathbb{C}}[ A](={\mathbb{C}}A +{\mathbb{C}}E)
$

が結論される。

※レポート問題

つぎのうち一問を選択して解きなさい。 (期限:次の講義の終了時まで。)

(I).
環としての同型 $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ [X]/(X^2+1)$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ [X] \cong {\mathbb{C}}$ が 存在することを示しなさい。

(II).

$\displaystyle A=
\begin{pmatrix}
7 & 4 \\
-5 & -2
\end{pmatrix}$

と置くとき、
  1. $ {\mathbb{C}}[A] \cong {\mathbb{C}}[X]/(X^2-5X+6){\mathbb{C}}[X]$ であることを示しなさい。
  2. $ {\mathbb{C}}[X]/(X^2-5X+6){\mathbb{C}}[X]$ の 0 でない零因子を一つあげなさい。
  3. $ {\mathbb{C}}[A]$ の 0 でない零因子を一つあげなさい。


平成17年11月24日