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代数学III 要約 No.1

\fbox{本講義の目的}

標数 0 のガロア理論入門

ガロア理論といえばガロアの基本定理である。 それは、体と群の関係を与える。群がなぜでてくるかといえば、 「共役」という操作を集めてくるからである。以下「共役」の例を挙げてみよう。

$ \bullet$ 複素共役

実数係数の多項式をもちいた関係式で $ z_1=1+i$$ z_2=1-i$ を 区別できるだろうか。例えば、$ z_1$

$\displaystyle z_1^2=2 z_1-2
$

という関係式を満たすが、これは $ z_1$$ z_2$ に置き換えても成り立つ。

実は、実数を係数とするどのような関係式も $ z_1$$ z_2$ と を区別することができない。これは方程式の言葉でいうと、 $ z_1$ が実係数の多項式 $ p(X)$ の根の一つなら、$ z_2$ も 必然的に根である、と言い換えることもできる。

他方、複素係数なら両者は簡単に区別できる。例えば、

$\displaystyle z_1^2=2 i
$

だが、$ z_1$$ z_2$ に入れ換えた式は正しくない。

$ \bullet$ もっと一般の共役

有理係数で % latex2html id marker 788
$ \sqrt{2}$% latex2html id marker 790
$ -\sqrt{2}$ は区別できるだろうか。

$ \omega$$ 1$ の3乗根の一つとするとき、

有理係数で % latex2html id marker 796
$ \sqrt[3]{2}$ % latex2html id marker 798
$ \omega\sqrt[3]{2}$ % latex2html id marker 800
$ \omega^2\sqrt[3]{2}$ は 区別できるだろうか。

「有理数」、「実数」以外でも、このようなことが起こることは十分あり得る。

そのため、「体」を考えるのが便利である。

定義 1.1   集合 $ K$ が体であるとは、$ K$ の中で足し算引き算、およびかけ算ができて、 さらに 0 でない元が $ K$ のなかで可逆であるときにいう。

一つの体を「持駒」として、どの程度のことができるか、あるいは、 その体はどのような性質をもつか、ということが基本問題である。 例えば、つぎのようなことを考えることができる。

$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ % latex2html id marker 812
$ \sqrt[3]{2}\omega $ を付け加えるようなときには、 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ \omega$ を付け加え、しかる後に % latex2html id marker 818
$ \sqrt[3]{2}$ を 考えるのが自然である。

同様に % latex2html id marker 820
$ \sqrt{2}+\sqrt{3}$ を考える際には、 % latex2html id marker 822
$ \sqrt{2}$% latex2html id marker 824
$ \sqrt{3}$ を手駒に加えて行くのが得策であることが多い。実は次のようなことが成り立つ。

例 1.1   体 $ K$ % latex2html id marker 829
$ \sqrt{2}+\sqrt{3}$ を元として含むならば、$ K$ は実は % latex2html id marker 833
$ \sqrt{2}$, % latex2html id marker 835
$ \sqrt{3}$, % latex2html id marker 837
$ \sqrt{6}$ も元として含む。

これらのことがらは、ガロア理論の一部であり、ガロア理論を理解すると 方程式や体のことが手にとるように分かるようになる。

問題 1.1   体 $ K$ % latex2html id marker 842
$ \sqrt{3}+\sqrt{5}$ を元として含むならば、 $ K$% latex2html id marker 846
$ \sqrt{3}$, % latex2html id marker 848
$ \sqrt{5}$, % latex2html id marker 850
$ \sqrt{15}$ を元として含むことを示しなさい。



平成16年4月12日