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代数学I特論要約 No.09

今日のテーマ

\fbox{復習と例}

例 09.1   $ p=13$ とし、 $ K={\mathbb{F}}_{p}$ 上の多項式

$\displaystyle f(X)=X^6-2
$

を考えよう。
    1. $ f$$ X^{p^2}-X$ とは互いに素である。
    2. $ f$$ X^{p^3}-X$ とは互いに素である。
    したがって、$ f$ は一次、二次、三次の因数をもたない。すなわち、$ f$$ K$ 上既約である。
  1. $ f$ の根の一つを $ \xi$ とし、$ L=K(\xi)$ とおくと、$ L$$ K$$ 6$ 次拡大である。
  2. フロベニウス写像 $ F$ によって、$ \xi \in L$

    $\displaystyle F(\xi)=\xi^p=4 \xi
$

    $ 4\xi$ にうつる。
  3. $ L$$ K$ のあいだの中間体は、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の分だけある。 具体的には、

    $\displaystyle L,K(\xi^2),K(\xi^3) ,K
$

    である。

面白いことに、$ p$ の値によっては $ {\mathbb{F}}_p$$ d$ 次拡大は $ X^d-a$ の形の多項式では決して得られないことがある。問題を参照のこと。

例 09.2   $ p=11$ とし、 $ K={\mathbb{F}}_{p}$ 上の多項式

$\displaystyle f(X)=X^6-X-1
$

を考えよう。
    1. $ f$$ X^{p^2}-X$ とは互いに素である。
    2. $ f$$ X^{p^3}-X$ とは互いに素である。
    したがって、$ f$ は一次、二次、三次の因数をもたない。すなわち、$ f$$ K$ 上既約である。
  1. $ f$ の根の一つを $ \xi$ とし、$ L=K(\xi)$ とおくと、$ L$$ K$$ 6$ 次拡大である。
  2. フロベニウス写像 $ F$ によって、$ \xi \in L$

    $\displaystyle F(\xi)=\xi^p=\xi^5+\xi+1
$

    $ \xi^5+\xi+1$ にうつる。
  3. $ L$$ K$ のあいだの中間体は、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の分だけある。 具体的には、

    $\displaystyle L,K(\xi+\xi^{11^2}+\xi^{11^4}),K(\xi+\xi^{11^3}) ,K
$

    である。

上の計算の補足の意味で、$ \xi$ に次々 $ F$ を作用させるとどうなるか書いておく。

$\displaystyle F^0(\xi)$ $\displaystyle = \xi$    
$\displaystyle F^1(\xi)$ $\displaystyle =\xi^5+\xi+1$    
$\displaystyle F^2(\xi)$ $\displaystyle =7\xi^5+6 \xi^4+4 \xi^3 +8 \xi^2 +3 \xi +7$    
$\displaystyle F^3(\xi)$ $\displaystyle =4 \xi^4 + 5 \xi^3 +9 \xi^2+5\xi$    
$\displaystyle F^4 (\xi)$ $\displaystyle =2 \xi^5 +\xi^4+4 \xi^3 +\xi^2+10\xi +2$    
$\displaystyle F^5(\xi)$ $\displaystyle =\xi^5+9\xi^3+4\xi^2+2 \xi +1$    
$\displaystyle F^6(\xi)$ $\displaystyle = \xi$    

問題 09.1   $ p=11$ のとき、 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の多項式 $ X^6-a$ $ (a\in {\mathbb{F}}_p)$ は既約になり得ないことを 示しなさい。

問題 09.2   $ p=17$ のとき、 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の $ 6$ 次既約多項式の例を見つけ、 それが既約であることを示しなさい。


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平成16年12月6日