代数学 II で、次のような議論を展開した。
(あ) 複素数を成分にもつような -行列 が与えられたとき、 への不定元 の作用を
他方、微分方程式を扱うときには次のような話が出てくる。
(い) ないし 上に、 の作用を定めることができる。
(あ)の話では の作用のみならず、 およびその和(複素係数の 線型結合)、すなわち の多項式の作用を考えるのがよいのであった。 多項式一つ一つも大事であるけれども、それらを全部残らずまとめて 箱に入れたもの(集合)を考えるのが更に有効である。 これが多項式環 で、 これは一種の「道具箱」を考えているようなものである。
同様にして、 で生成される環 を準備しておいて、 ないし を -加群とみなす。これにより(線型)微分方程式を 環加群の枠組で考えることができるようになる。
-準同型の定義は、線型写像の定義と瓜二つであることに注意しよう。 実際、 が可換体であるときには、上の定義は線型写像の定義 そのものである。 線型写像の場合と同様に、その核と像を定義することができる。 ただし、 が体でない場合、特に非可換環の場合には、-準同型は 線型写像とはかなりおもむきが異なる。例をいくつか挙げよう。