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代数学特論 II 要約 No.1

\fbox{本講義の目的}

体の理論の基本を、代数幾何的な見地から概説する。 代数学 II においては厳密性は少々落しても幾何学的直観が 身につくことを旨としていたが、こんどは少々細かいところまで 注意したい。

今日のテーマ:

写像 $z\to z^2$.

複素数体 ${\Bbb C}$ からそれ自身への写像 $f:z\mapsto z^2$ を考えよう。 前期の代数学IIでやったように、この写像には環準同型

\begin{displaymath}\phi:{\Bbb C}[X]\to {\Bbb C}[X] : \phi(f(X))=f(X^2)
\end{displaymath}

が対応している。 $(f={}^a\phi)$. 本講義では、この環準同型を 体 ${\Bbb C}(X)$ からそれ自身への準同型に拡張してその性質を見たいのであるが、 その前に $f$ の性質についていくつか注意しておきたい。

補題 1.1  
1.
$f$ は 原点を原点に写す。
2.
原点以外では、$f$ は2:1の写像である。
3.
どんな連続写像 $g:{\Bbb C}\to {\Bbb C}$ を持ってきても、 $f\circ g=id$ を満たすことは 不可能である。

この補題の最後の主張は、$z$ の平方根をとるということが意外に難しい 操作であることを示している。

平方根、あるいはもっと一般に方程式の根、を詳しく調べるための 理論がいわゆるガロア理論である。 この講義でその全容を明らかにすることはできないが、いくつかの点については 解説する予定である。

問題 1.1   $z\mapsto z^3$ なる複素平面 ${\Bbb C}$ からそれ自身への写像を、 どの点がどのように移るかに注意しながら図示せよ。 (講義を受けたものは講義の $z\mapsto z^2$ の図示を参考にすること。 不幸にして1回目の講義を欠席した場合には自分なりに工夫してみること。)




2001-10-02