代数学 II 要約 No.12

定義 12.1 代数的集合

の座標環

のイデアル

が与えられた時、

$\begin{displaymath}\{x\in V; p(x)=0 \qquad (\forall p\in I)\} \end{displaymath}$

はやはり代数的集合である。これを (

の時と同様に、)

とかく。

補題 12.1 代数的集合

の間の多項式写像

が与えられているとする。このとき、

に対応する関数環の準同型写像(「引き戻し」) $\phi$ の核を

とおくと、次のことが成り立つ。

1.

$\begin{displaymath}I=\{p \in A(W); p\vert\operatorname{Image}(f)=0 \} \end{displaymath}$

2.

は $\operatorname{Image}(f)$ を部分集合として含む

の代数的集合のうち、最小のものである。 (Zariski 位相の言葉でいえばこれは

は $\operatorname{Image}(f)$ の(Zariski位相に関する) 閉包であると言ってもおなじことである。)

これまでのところを簡単な表にまとめると、次のような具合になる。

環論	代数幾何学
「モノ」の対応
多項式環 $k[X_1,X_2,\dots,X_n]$	n次元空間の座標環
体を含む環	代数的集合の座標環 A(V)
のイデアル	の代数的部分集合(Zariski 閉集合) の
	上で零になる関数全体
剰余環	の代数的部分集合の座標環 A(F)
-準同型 $\phi:A(W)\to A(V)$	代数的集合の間の多項式写像 $f={}^a\phi:V\to W$
準同型の核 $\operatorname{Ker}(\phi)$	多項式写像の像の Zariski 閉包 $\overline{f(V)}$
「性質」の対応
が非自明な巾零元を持つ	は二つの交わらない代数的集合和集合である
が非自明な零因子を持つ	は可約な代数的集合

この表はかなり大まかなもので、厳密にはある程度の条件がないと左右の項目が対応しなかったり、少しずつずれる場合もある。それらの詳細についてはそれぞれの回の要約等を参照されたい。一般的には、幾何的なイメージをうまく使って問題を把握し、そのあと環論で正確な証明をつけるのがよいだろう。

問題 12.1 $A=\mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y,Z]$ から

への環準同形写像 $\phi$ を

$\begin{displaymath}\phi(X)=XZ,\quad \phi(Y)=(YZ),\quad \phi(Z)=Z \end{displaymath}$

で定義する。さらに、

のイデアル

を、

$\begin{displaymath}I=(X^2+Y^2-1) \end{displaymath}$

で定義する。このとき、

1.: のグラフの概形を書きなさい。
2.: $\psi=\pi\circ\phi: A \to A/I$ の核を求めなさい。ただし $\pi:A\to A/I$ は自然な射影 ( に対してそのクラスを対応させる準同型)である。
3.: ${}^a\psi$ の像の概形を書きなさい。