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代数学特論 I 小テスト解答と解説

問題 6.1   $A,E \in M_3({\Bbb C})$, $B\in M_9({\Bbb C})$ を、

$A=
\begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
1 & 0 & 0
\end{pmatrix}$, $E=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}$, $B=
\begin{pmatrix}
A & A-E & 0 \\
0 & A & A-E \\
0 & 0 & A
\end{pmatrix}$で定義し、さらに $\omega=\frac{-1+\sqrt{-3}}{2}$ とおく。 このとき、

1.
$A^3$ を求めなさい。

答え: $E$. (これは単純計算であるが、 基本ベクトルの行き先 ( $e_1\mapsto e_3 \mapsto e_2 \mapsto e_1$)を 見てやる方が若干早い。)

2.
$A$ の固有値をすべて求めなさい。

答え: $1,\omega, \omega^2$. (これも簡単だろう。なお、上の 1.の結果から、$A$ の固有値は必ず 3乗して $1$ になることもわかっているはずである。)

3.
$Q^{-1}AQ$ が対角行列であるような正則行列 $Q$ を一つ求めなさい。

答え:

\begin{displaymath}Q=
\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1\\
1 & \omega & \omega^2 \\
1 & \omega^2 & \omega
\end{pmatrix}\end{displaymath}

( $1,\omega, \omega^2$ に対する固有ベクトルを求めて並べればよい。この場合には $A-E$, $A-\omega E$, $A-\omega^2 E$ の核を求めるのが一番早いだろう。 ただし、この程度の行列なら基本ベクトルの行き先をよく見れば 慣れれば目のこで固有ベクトルがわかるはずである。 なお、$Q^{-1}AQ$

\begin{displaymath}D=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & \omega & 0 \\
0 & 0 & \omega^2
\end{pmatrix}\end{displaymath}

に等しい。)

4.
上の $Q$ にたいし $S=
\begin{pmatrix}
Q & 0 & 0 \\
0 & Q & 0 \\
0 & 0 & Q
\end{pmatrix}$とおく。このとき $S^{-1}BS$ を求めなさい。

答え:


\begin{displaymath}S^{-1}BS
=
\begin{pmatrix}
D & D-E & 0 \\
0 & D & D-E \\
0 ...
...1 & 0 & 0 \\
0 & \omega & 0 \\
0 & 0 & \omega^2
\end{pmatrix}\end{displaymath}

と書いてもいいし、ちゃんと成分で

\begin{displaymath}S^{-1}BS
=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 &0 & 0 & 0& 0 & 0 & 0 \\...
... & 0\\
0 & 0 & 0& 0 & 0 & 0 &0 & 0 & \omega^2\\
\end{pmatrix}\end{displaymath}

と書いてもよい。また、次のようにブロックを意識した書き方でも構わない。

\begin{displaymath}S^{-1}BS
=
\begin{pmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & ...
...
0 & \omega & 0 \\
0 & 0 & \omega^2
\end{bmatrix}\end{pmatrix}\end{displaymath}

5.
$B$ の固有値をすべて求めなさい。

答え: $1,1,1,\omega,\omega,\omega,\omega^2,\omega^2,\omega^2$.

($B$ の固有方程式(固有値)と $S^{-1}BS$ の固有方程式(固有値)はおなじ。)

6.
$C=R^{-1}BR$ がジョルダンの標準型になるような $R,C$ を求めなさい。

答え:

\begin{displaymath}R=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 & - 3 \omega & 0 & 0 & 3 \omega ...
...
0 & 0 & 1 & 0 & 0 & - \omega -1 & 0 & 0 & \omega
\end{pmatrix}\end{displaymath}


\begin{displaymath}C=\begin{pmatrix}
E & 0 & 0 \\
0 & J & 0 \\
0 & 0 & \bar{J}...
...& 1 & 0\\
0 & \omega^2 & 1\\
0 & 0 & \omega^2
\end{pmatrix})
\end{displaymath}

まず $X=S^{-1}BS$ の列ベクトルに着目する。

\begin{displaymath}X e_1=e_1 , X e_4=e_4, X e_7=e_7
\end{displaymath}

であるから、$X$ の固有値 $1$ に対応する固有ベクトルとして $e_1,e_4,e_7$ があることがわかる。同様にして、 $e_2,e_5,e_8$$X$ の固有値 $\omega$ に対応する弱固有ベクトル, $e_3,e_6,e_9$$X$ の固有値 $\omega^2$ に対応する弱固有ベクトルであることがすぐにわかる。 このことに着目して、ひとまず $X$ を次のように変換する。

\begin{displaymath}Y=P^{-1}XP=
\begin{pmatrix}
E & 0 & 0\\
0 & L & 0 \\
0 & 0 & \bar{L}
\end{pmatrix}\end{displaymath}

ただし $P$ は次のような基底の置換に対応する行列である。

\begin{displaymath}\begin{pmatrix}
e_1 &e_2& e_3& e_4& e_5& e_6& e_7& e_8& e_9\\...
...1 & e_4 & e_7 & e_2 & e_5 & e_8 & e_3 & e_6 & e_9
\end{pmatrix}\end{displaymath}

行列 $P$ $(1,1),(4,2),(7,3),(2,4),(5,5),(8,6),(3,7),(6,8),(9,9)$ の各成分 が $1$ で残りは $0$ であるような行列である。 $P$ 自体を書くのはばかばかしいのでここでは割愛する。


\begin{displaymath}L=\begin{pmatrix}
\omega &\omega-1 & 0 \\
0 & \omega & \omeg...
...\\
0 & \omega^2 & \omega^2-1\\
0 & 0 & \omega^2
\end{pmatrix}\end{displaymath}

である。

あとは $\omega-1$, $\omega^2-1$ の部分を処理することだが、ここは単にベクトルを 何倍かすればよい。

一応補題の形で述べておくとつぎのようになる。

補題 6.1  

\begin{displaymath}X=\begin{pmatrix}
a & b & 0 \\
0 & a & c \\
0 & 0 & a
\end{pmatrix}\end{displaymath}

($b\neq 0$, $c\neq 0$) のジョルダンの標準型は

\begin{displaymath}Y^{-1}XY=
\begin{pmatrix}
a & 1 & 0 \\
0 & a & 1 \\
0 & 0 & a
\end{pmatrix}\end{displaymath}

であたえられる。ここで、$Y$

\begin{displaymath}Y=
\begin{pmatrix}
bc & 0 & 0 \\
0 & c & 0 \\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}\end{displaymath}

で与えられる行列である。

(なお、行列のサイズをかえても同様のことをいうことができる。)

7.
$B$ のジョルダン分解をしなさい。

答え:

\begin{displaymath}B=Z+N
\end{displaymath}


\begin{displaymath}Z=
\begin{pmatrix}
A & 0 & 0 \\
0 & A & 0 \\
0 & 0 & A
\end{pmatrix}\end{displaymath}


\begin{displaymath}N=
\begin{pmatrix}
0 & A-E & 0 \\
0 & 0 & A-E \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\end{displaymath}

(これが $B$ のジョルダン分解を与えることは、定理5.1 の1.-4. までの諸性質を 調べればよい。これはやさしい。定理5.1 の一意性の威力である。)

問題 6.2   $A,E \in M_3({\Bbb C})$, $B\in M_9({\Bbb C})$ を、

$A=
\begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
2 & 0 & 0
\end{pmatrix}$, $E=
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}$, $B=
\begin{pmatrix}
A & A-E & 0 \\
0 & A & A-E \\
0 & 0 & A
\end{pmatrix}$で定義し、さらに $\omega=\frac{-1+\sqrt{-3}}{2}$ とおく。 このとき、

1.
$A^3$ を求めなさい。

答え:$2E$.

2.
$A$ の固有値をすべて求めなさい。

答え: $\sqrt[3]{2},\sqrt[3]{2}\omega,\sqrt[3]{2}\omega^2$.

3.
$Q^{-1}AQ$ が対角行列であるような正則行列 $Q$ を一つ求めなさい。

答え:

\begin{displaymath}Q=\begin{pmatrix}
1 & 1 & 1 \\
{\sqrt[3]{2}} & {\sqrt[3]{2}}...
...4}} & {\sqrt[3]{4}}\omega^2 & {\sqrt[3]{4}}\omega
\end{pmatrix}\end{displaymath}

4.
上の $Q$ にたいし $S=
\begin{pmatrix}
Q & 0 & 0 \\
0 & Q & 0 \\
0 & 0 & Q
\end{pmatrix}$とおく。このとき $S^{-1}BS$ を求めなさい。

答え:

\begin{displaymath}S^{-1}BS
=
\begin{pmatrix}
D & D-E & 0 \\
0 & D & D-E \\
0 ...
...]{2}}\omega & 0 \\
0 & 0 & {\sqrt[3]{2}}\omega^2
\end{pmatrix}\end{displaymath}

5.
$B$ の固有値をすべて求めなさい。

答え: $\sqrt[3]{2},\sqrt[3]{2}\omega,\sqrt[3]{2}\omega^2$ (それぞれ3重)

6.
$C=R^{-1}BR$ がジョルダンの標準型になるような $R,C$ を求めなさい。

答え: 問題1 で与えたのとおなじ $P$ と上の $S$ とを用いて、 $P^{-1}S^{-1}BSP$を計算してみると、

\begin{displaymath}\begin{pmatrix}
{\sqrt[3]{2}} & {\sqrt[3]{2}} -1 & 0 & 0 & 0 ...
...0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & {\sqrt[3]{2}} \omega^2\\
\end{pmatrix}\end{displaymath}

となる。対角に並ぶ三つのブロックが三つともこれ以上ブロック分け できない形をしている。 ここが 問題1 と大きく異なるところである。

あとは問題1と同様に対角行列で形を整えればよい。 $R$ は次のようになる。(dviファイル版では大きすぎて全体を見ることができないので、 ここだけはhtmlファイル版のものを見るのをお勧めする。


\begin{displaymath}\begin{pmatrix}
-2{\sqrt[3]{2}} + {\sqrt[3]{4}} + 1 & 0 & 0 ...
...{4}} \omega^2
& 0 & 0 & {\sqrt[3]{4}} \omega
\\
\end{pmatrix}\end{displaymath}

$C$ は次のようになる。


\begin{displaymath}\begin{pmatrix}
{\sqrt[3]{2}} & 1 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & ...
... & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & 0 & {\sqrt[3]{2}} \omega^2
\end{pmatrix}\end{displaymath}

本問はレポート問題ゆえ少し繁雑にしてみたがちょっと度が過ぎたかも知れない。

7.
$B$ のジョルダン分解をしなさい。

答え:

\begin{displaymath}B=Z+N
\end{displaymath}


\begin{displaymath}Z=
\begin{pmatrix}
A & 0 & 0 \\
0 & A & 0 \\
0 & 0 & A
\end{pmatrix}\end{displaymath}


\begin{displaymath}N=
\begin{pmatrix}
0 & A-E & 0 \\
0 & 0 & A-E \\
0 & 0 & 0
\end{pmatrix}\end{displaymath}


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2001-01-31